コラム

 公開日: 2016-02-13  最終更新日: 2016-02-14

「黄金のアデーレ」に見るアメリカのお墓と忘れてはいけない歴史 編

こんにちは。富山の墓石専門店㈱スナダ石材のメモリアルアドバイザー、砂田嘉寿子です。

趣味の一つである「映画鑑賞」。
映画によっては、葬儀やお墓、墓地のシーンというのが少なからず登場します。
外国映画であれば、その土地の葬送スタイルが観れるという、またとないチャンスなわけです!

私は「死」や「墓」が出てくる映画のシーンが昔から結構好きなんですが、これは「葬送」がその土地やそこに住む人々を端的に表していることが分かるからであり、それは映画の醍醐味の一つなのではないかなと思います。

ユダヤ人迫害の歴史が描かれる「黄金のアデーレ」


黄金のアデーレ
映画では、弁護士ものや裁判沙汰のジャンルも大好きなので、去年の「黄金のアデーレ 名画の帰還」の公開も楽しみにしていました。

実はこの映画、法廷映画としての見どころ以上に、「過去に向き合い、失った過去を取り戻す」という大きなテーマに沿って描かれています。

ウィーンの名家に生まれた主人公・マリアは、第二次世界大戦中にヒトラーにより併合されたオーストリアで、ナチスドイツから亡命し、現在はアメリカに住んでいます(実在のマリアは2011年に死亡)。

その彼女が、大戦中にナチスドイツに奪われた家財であるクリムト作の叔母の肖像画を、新進の弁護士(実は彼のルーツもオーストリア系ユダヤ人)と共に、オーストリア政府からこの手に戻すまでを描いたスリリングなストーリーなのですが、二人が、同胞のユダヤ人迫害という辛く悲惨な歴史をたどっていく姿も大きな見どころとなっています。

土葬が中心のアメリカと火葬中心の日本との違い

主人公・マリアの姉が亡くなり、彼女の葬儀のシーンが冒頭に出てきます。
ロスアンジェルスにある芝生墓地で、マリアが姉との思い出を語り、姉の棺に土を被せるシーンがあります。
アメリカ映画ではお馴染みのこの場面、私たち日本人の埋葬とはだいぶ異なりますね。

日本と違い、アメリカやヨーロッパでは土葬が大半です。
日本はよく「火葬大国」とも言われますが、日本の火葬率は99.97%!(2013年)
対してアメリカでは火葬が30%程度で、州によっても異なり、まだまだ土葬が中心です。

ヨーロッパでは各国により土葬と火葬の割合が違いますが、土葬と火葬の割合は、約半々。
主人公の故郷・オーストリアもアメリカと同じくらいで30%程度が火葬です。
ということは、アメリカでの埋葬と故郷の埋葬は同じ「土葬」であったと推測できます。

ちなみにアメリカやヨーロッパでまだまだ多い「土葬」。これはキリスト教の考え方からきているとも言いますが、実際には各国の状況と照らし合わせても「国土の大きさ」との関連性が大きいように思えます。

「人間は忘れてしまうもの」

遺品を整理していくなかで、叔母の肖像画に関しての手紙を見つけたことから、過去を取り戻そうと奮闘する主人公。
「失うことを経験した」彼女の人生を考えれば、これは大変な勇気がいることだっただろうと推測できます。

家族の大切な美術品をナチスドイツに理不尽に奪われ、そして命を守るために病気の両親と別れ、夫とともに必死にアメリカへ亡命。あの時逃げないと、今彼女はここにいることがなかったと思うと、本当に緊迫感あふれるシーンでした。

そして両親との別れの場面、見張りのゲシュタポにバレないように、こっそりと最後の言葉を交わします。

「君の新たな国の言葉で別れを言おう。Remenber us」(私たちを忘れないでおくれ)

彼女はその父の言葉とともに大きな戦いに挑むわけですが、それは戦前、戦中、そして戦後を見つめた彼女が、「人間は忘れてしまうもの」ということをよく分かっていたからでしょう。

「黄金のアデーレ」はオーストリア政府が所有していた頃は、巨匠の名画の一つだったかもしれませんが、ニューヨークの美術館で展示されている現在は、「歴史に翻弄された人々の軌跡」を背負った作品として、また新たな命が吹き込まれたといえるでしょう。

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