お墓を守るプロ
コラム
公開日: 2016-09-07 最終更新日: 2016-09-09
【古くて新しい!】五輪エンブレムと家紋に秘められた祈りと美のカタチ
こんにちは☆
富山の墓石専門店㈱スナダ石材のメモリアルアドバイザー、砂田嘉寿子です。
栄光をおさめたリオオリンピックも終わり、リオパラリンピックも始まりました。4年後にはいよいよ東京オリンピックを迎えますね。ただ、ここに至るまでにいろいろと紆余曲折ありましたよね。
新国立競技場しかり、エンブレム問題しかり…。
そして新しく決まった五輪エンブレムは、私たちもなじみがある「紋様」でした。
(ITメディアニュースより)
一見シンプルなこの紋様ですが、デザイナーの野老さんのインタビューを読み、シンプルななかに秘められている祈りの奥深さに感動したしだいです。
私たちも仕事でこの紋様の代表格である「家紋」を墓石に彫っていくのですが、まぁさまざまな種類があるわけですよ。
今まで「家紋は彫りますか?」と、何気なくお聞きしていましたが、もしかしてこれはすごく奥が深いんじゃなかろうかといことで、「家紋」からみえてくる想いや祈りというものを解き明かしていこうと思います。
家紋の歴史は平安時代にさかのぼる
「紋章は平安時代、公家の「文様」から起こりました。衣服や牛車、あるいは調度などに好む文様を付ける。それが菊なら菊、蝶なら蝶と固定化される傾向になって、その文様はその人と深く結びつくのです。それが子孫に踏襲されたとき、その文様は家のシンボルとしての機能を持つようになります。それが紋章の起りです」
<『卍の魔力、巴の呪力 泡坂妻夫』より引用>
平安時代に公家からはじまった紋様は、鎌倉時代になると武士に一気に広まります。これは鎌倉武士が戦場で旗印を掲げて的味方を区別する必要があったからです。
その頃は、平安時代の紋様よりも実用的になり、わかりやすく目立つものを用いるようになりました。
家紋といえば丸。丸が持つパワーに気付いた日本人
嘉門といえば達夫。家紋といえば丸というくらいに、家紋にはほとんど丸がついています。
丸をつけないと弱々しく感じる紋にも、丸をつけることで力強く重厚に感じます。やはりそこは家のシンボルということで、丸をつけてパワフルに見える方を好まれたのでしょう。
この仕事を始めた当初、代表的な家紋「丸に木瓜」のことを「マルニモッコウ」と呼び、マルが丸を表していることを知らずにいました。かれこれ、10年ほど前でしょうか…。(遠い目)
この「丸に木瓜」の木瓜の原型は、鳥の巣を表しているとのことです。鳥の巣は生物の誕生、成長にかかわるので吉祥的な意味を表しています。
この「窠(か・鳥の巣の意味)」の模様が仏教美術とともに日本に伝わってきたのが飛鳥時代。
それが平安時代に公家によって、花のようなカタチに改良され、今の「丸に木瓜」になっています。ちなみにこの花のカタチも唐花で大陸から伝わっているものです。
もともとの模様を解体し、自分たち好みに改良し、バリエーションが増えていった家紋。
この「丸に木瓜」を例に一つとっても、そこから私たちの祈りと美の歴史の厚みが感じられます。
では、ほかにも墓石に彫る家紋の一例をご紹介していきます。
<丸に橘>
昔の皇居には必ず橘が植えられ、鑑賞されていました。
橘はミカンのことでもありますが、芳しい花の香と実の美しさ、そして甘味さに、詩に詠まれ、また姓にも使われるようになり、文様にも用いられるようになりました。
<丸に梅鉢>
梅鉢紋を家紋としている家で有名なのは加賀前田家です。この梅紋そのものは、奈良朝のころから文様として存在していました。鎌倉時代になると北野天満宮の神紋でもあったことから、天満宮信仰の地の家紋に多くみられます。
こちらは「家紋集」にも載っていないため、施主様から家に飾ってあった額をお借りしたものです。
家紋は二、三の特例を除けば使用の制限もなく、好みで自由に創作できるので、このようにいくつかのパターンを組み合わせた家紋もときどき見られます。
元々は姓を表すものであったので、こちらのお家も名前に「竹」がついています。
竹は梅や松と共におめでたい植物の一つであります。また節度を持って、すくすく延びるという繁殖性も意味しています。
ご本家はもう一千年続いているということだったので、家紋に込められた祈りが自然に受け継がれていったのでしょう。
家紋を受け継ぐことは「美と願いと祈り」を引き継ぐこと。
平安時代に生まれ、千年の歴史のなかで洗練され完成した紋様。戦国時代には石碑に刻まれているものも発見されていますが、家紋が庶民に定着するのは江戸時代になってからで、墓石に刻まれるようになったのもその頃からです。
そしてその江戸時代にはすでに家紋の元来の目的が薄れ、装飾性を取り戻していきます。
これは平和な世がきたことの証であり、その頃の人たちは美的感覚や洒落っ気を研ぎ澄ませ、紋様の完成形を作り上げました。
面白いのは日本的と思われている紋様も、大陸から伝わった仏教美術が源流となっているということです。
その原型を自分たちらしくアレンジし、洗練させてきた私たち日本人が持つ「美に対するこだわり」が、今も私たちを虜にさせ、そして墓石に彫刻して残していこうとする源泉になっているのかもしれません。
<『卍の魔力、巴の呪力』 泡坂妻夫、『日本の家紋辞典 由来と解説』 大隈三好 参照>
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