お墓を守るプロ
コラム
公開日: 2016-09-21 最終更新日: 2017-09-28
変わり果てた実家のお墓。違う宗派の題目が刻まれている!
こんにちは☆富山の墓石専門店㈱スナダ石材のメモリアルアドバイザー、砂田嘉寿子です。
台風による雨もおさまり、すっかり秋めいてきたこの頃。
急に寒くなり、テンションも下がってきていますが、食欲についてはしっかり秋を感じております。
さて表題は、先日のお客様のご相談事例ですが、私のコラムをお読みいただいてご来店いただきました。
お客様にも今回の事例をこちらで書いても良いとご了承いただきましたので、同じようなケースでお悩みの方の参考になればと思います。
「南無阿弥陀仏」の文字が消えている!?
お客様をA様とさせていただきます。
A様のご実家のお墓には、お父様のお骨(お骨壺)が納骨されています。
元々は、浄土真宗の寺院の墓地にお墓があったのですが、墓の承継者であるご兄弟が、「そのお墓をキレイにして市営墓地に改葬(墓とお骨の引越し)をすることにした」と言われました。
A様はご兄弟にお任せして、あるとき新しい市営墓地にお墓参りに行かれたのですが、そこで驚いたのが、お墓の竿石に彫ってある浄土真宗の名号である「南無阿弥陀仏」が別の宗派の題目に変わっていたのです。
そのお墓を浄土真宗のお寺から移転する際に、竿石の表面を切断して、新たにお題目を彫ったようで、実際にその墓で墓石を見させていただいたところ、切断したためにやはりバランスが少し悪くなっていました。(一見するだけではバランスの悪さはわかりません)
墓石に彫った文字を再度切断して、新たに文字彫刻できる?
A様のご希望としては、お墓で眠っているお父様は浄土真宗を篤く信仰していらっしゃったので、お父様が眠る墓の文字をもう一度、「南無阿弥陀仏」に戻したいというものでした。
(※画像と本文は一切関係ありません)
今の竿石をそのまま使うとすると、新しく文字を彫るために竿石は二度切断されることになります。
竿石に彫ってある文字の深さは、どんなに浅くても1寸(約3cm)以上はあります。そこをまず切って、研磨して彫刻することになるので、1寸5分(約4.5cm)程度は薄くなります。
そして竿石の横には基本的に建立年月日と建立者名が彫られていますが、もし連名になっていると、このバランスがおかしくなってしまうでしょう。
また、竿石の下の上台に水垂加工がしてあるとそことの兼ね合いも出てきます。
一度目はそれほどバランスが崩れなくても、これを二回するとなると最初に墓石を建てたときに比べると、竿石はかなり細くなってしまいます。
実家の墓の文字彫刻を変更がはらむ問題とは?
竿石の文字を彫刻しなおすことは、技術的には可能であり、出来ないことはないということを説明してきましたが、では「やっても良いものなのか」と聞かれると、今回の場合は2点の問題点が残ります。
まず1点目でこれが一番の問題なのですが、「実家の墓」ということで墓の承継者はご兄弟であるということです。
ご兄弟が改宗して、墓石の文字を新たに彫り直した、というのが事の発端なのですが、これについてはとくに問題はないと思われます。同じ兄弟のA様に内緒でやったということについては大いに問題がありますが、それは家族間の問題にとどまります。
ですが、これをA様が無断で元に戻して(実際には切ってしまったものは戻せないので、彫り直すか新たな竿石に変える)、それをご兄弟から訴えられたとなると、A様はかなり分が悪くなってしまいます。
この場合は、ご実家の墓の承継者はご兄弟になっていること、その証に市営墓地の名義人(管理人)はA様でなく、ご兄弟になっています。
信仰する宗教を変えるというのは、ただ単に家の宗派を受け継いでいるのとは違い、それなりのエネルギーが必要だと思います。こちらが元に戻しただけという主張は通じない恐れが大きく、話し合いでまとまる可能性も薄く、どんな手段に出るかは分かりません。
家のため、親のことを考えて行動したとしても、法的にはA様の立場は弱いのが現実です。
石材店の立場としては、余計なことは考えずに、ご依頼者さまの要望を受けて仕事を受けても、その後のことは一切関係がないとすることで問題はないかもしれません。
しかし私たちがした仕事によって、さらなる家族間のいざこざを生んでしまったならば、一番悲しむのはおそらく亡くなっているお父さまであり、A様のお父様を不憫に思うお気持ちをないがしろにしてしまう結果につながる可能性があります。
やはりいかなる理由があったとしても、墓と墓地の管理者さまに無断で仕事を行うことは、石材店がお客様をトラブルに巻き込んでしまう可能性を含み、道義上問題が残るでしょう。
竿石は仏石。できれば切断したくない…。
そして2点目。
これは精神的ことになりますが、竿石を切るということは、よほどのことがない限りは抵抗があります。それは竿石は、別名「仏石」でもあるからです。
すでに一度、ここを切断してあること自体がこの問題を生んでいるわけですが、ここを切ったり、彫ったりすることは仏さまを切ることになります。
やんごとなき事情もあるでしょうが、ここは基本的にはあまりいじらないようにしたいというのが私たちの心情です。
うちの先代においては、竿石に個人の名前を彫るのはけしからんということで、先代のスナダ石材の墓では竿石でなく、三段目に建立者名が彫ってあるくらいです。
それこそ先代であれば、彫り直したいという依頼をされるお客様には説教を垂れている可能性があるので(笑)、彫り直すという依頼には、竿石を新たに交換しないといけないと言うでしょう。
現在では閉眼供養や魂抜きの法要を行えば、仏石もただの石と捉えるのですが、それでもやはり多少の抵抗が残ります。
まとめ
「実家の墓に彫ってある文字を変えたい」というご要望でしたが、技術的にはできなくはないけれども、承継者さま(墓地の名義人)に無断で変えることは止めておいた方が良いことをお伝えいたしました。
A様の本望は、実家のお墓云々ではなく、お父様が安心して眠っていることを見守ることであり、将来的に一緒に眠るお母さまも同様だということなので、また別の解決策をご提案いたしました。
A様自身もお墓をいじることでトラブルになる可能性を考えて悩んでおられたので、お墓に関してはそのままにしておくということになりました。
お墓が家や信仰の象徴でなくなってきたとはいえ、いざそのような問題が起こってしまうと、やはり家族間の話し合いが重要だと感じますが、話して解決するものならそもそも問題になってないんですよね。。
他に同じようにお悩みの方の少しでも力になればということで、A様のご相談事例を書かせていただきました。
A様、ありがとうございました。
◇1956年創業、1500件以上の建立実績
└ご家族の想いをカタチにする墓石専門店
http://www.e-isiyasan.com/
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