コラム

 公開日: 2017-03-08 

映画「沈黙」をみてわかったカタチある物を拠り所にしてきた日本人

映画「ラ・ラ・ランド」を観た人たちが踊りだしそうになっている今、私の心はまったく違う方向を向いています。
それは、巨匠マーティン・スコセッシ監督の映画「沈黙-サイレンス-」を観たことにより、答えの出ない問いを自分に向け続けているからかもしれません。



ご覧になった方も多いと思いますが、この映画は遠藤周作の原作を映画化したものです。
実は1971年に篠田正浩監督により、すでに映画化されているのですが、自身がカトリック信者でもあるスコセッシ監督は、この小説を映画化したいとの想いを、28年もの間あたため続けていたのです。

仏教徒で、しかも遠藤周作の原作を読んだわけでもない私ですが、この映画からうけた影響は大きかった!
いや、別に改宗するとかの影響ではないんですが、なんかいろいろ考えさせられることが多く、しかも考えることが多いわりには、その答えをはっきり出せないという心の迷宮にはまってしまっています…。

だけど、一つだけ確信というか、これについてだけはちょっと語れそうだという部分がありました。
それは、お墓を大切にする日本人の心根を表しているものが、この映画に描かれていたことです。
じっさいに墓が出てくる場面はありませんが、なぜお墓に手を合わせるのか。
日本人の祈りに横たわっているものはこれかもしれない、といったことをかいつまんでコラムに書いてみたいと思います。

概念よりも「物」を大切にするから果たせる「物との一体化」

映画の主人公はロドリゴ神父。
先に日本にわたった宣教師であるフェレイラ神父が幕府のキリシタン弾圧に屈し、棄教して日本人に帰化したとの噂を確かめるために、もう一人の連れのガルべ神父とともに、日本の長崎、五島列島の方へやってきます。

当時は、幕府が出したキリスト教禁止令(禁教令)が発令されて約30年。
宣教師だけでなく、キリスト教信者への弾圧も強化され、棄教改宗しない人たちへの拷問が行われていた時代です。
ちなみに最初は、キリシタンの発見→棄教の拒否→死刑だったのですが、殉教を喜ぶキリシタンへの対応として「拷問」に変わっていったようです。

そうした幕府の禁教令の発動のなか降り立ったロドリゴ神父たちを、長崎の隠れキリシタンの村民たちは、まるでキリストが現れたかのように喜びます。

映画「沈黙-サイレンス-」FBページより

そして彼が持っているロザリオの珠を欲しがったり、藁で編んだ十字架を大切にしている信者たちを目の当たりにします。

Wikipediaより

映画「沈黙-サイレンス-」予告編より

そこで、ロドリゴ神父はふと思います。
このロザリオの珠一つをありがたがる日本人は、キリスト教の概念を信仰しているというより、その「徴 しるし」を信仰しているのではないかと。

キリスト教を信仰することは、聖書に書かれている教えに従うという一種の契約であり、大事なのはむしろカタチでなく、その概念なのですが、日本人のキリシタンにとっては「概念=カタチのないもの」であり、ロザリオの珠の一つでもいいから、そのカタチあるものを必要としていることを感じとります。

日本人のこの独特の感覚が、異教であるキリスト教がここ日本では根付かない理由として、奉行である井上筑後守はこう表現しています。
「ここは沼なのじゃ、パードレ(神父)。沼には根(=キリスト教)が張らんのじゃ」

映画に出てくる「踏み絵」もそうです。
奉行たちは実はわかっているのです。信者の心の中までは入り込めないことを。だからこの「踏み絵」を踏んで、「形式」だけは信者でないことを示せと言います。
形式はその言葉どおり「カタチ」でしかないのですが、カタチとして「踏む」という行為を最重要視しています。

踏み絵 Wikipediaより

ロドリゴ神父も信者たちにこう叫びます。
「Step on!(踏め!)」と。
踏んだところで心は侵されないのだから、それは単なる形式だと伝えるのですが、それでも踏むことに躊躇したり、踏むときに足が震えたり、または踏むことはできても、聖母マリアのロザリオにツバを吐くことができず、拷問に合って死んでいくことになります。

そして「物」が「人」になる日本人

カタチのない概念を信じることよりも、姿形あるものに魂が宿ると考える日本人的な考えが、「踏み絵」に現れていると感じます。それを「踏む」ことで、棄教したとみなすことに、日本人らしさが端的に現れているのではないかと。

大木や巨石に神が降りてきたとみなしてきた日本人の土着信仰にも、そして墓石の石に「魂を入れる(抜く)」と考えるのも、「踏み絵」とつながっているようにも考えられます。
そしてキリスト教徒の墓石では、こういった「入魂」や「抜魂」といった考え方はありません。

では、その魂はどこからきているのかというと、それは最終的には「人」につながります。
「沈黙」でいえば、イエス・キリストであり、またロドリゴ神父ともいえます。

信仰というカタチのないもののために死ぬのでなく、実在した「人」のために死ぬというのが日本人の感覚にちかいのかもしれません。
それは時代が変わると、「特攻」という殉死ともつながっていきます。

墓石に手を合わせるのは、祈る対象になっているから

日本の信仰で最も大きく、日本人の根っこになっているのが「祖先信仰」と言われています。
「仏さま」が、うちのじいちゃんやばあちゃんでもあるからこそ、仏教とこの祖先祭祀が融合して、仏教が日本的に浸透していったともいえます。

それを象徴しているものが「墓石」なのですが、墓を守ることの意義に、「物を人とみなしている」日本人的な感覚が根底にあり、それが「沈黙」からも垣間見れたような気がします。
墓参りで手を合わせるのは、これを体現していることであり、この「物と人(魂)との一体化」が私たちの文化の背景に大きく横たわっているのでしょう。

この「日本人らしさ」が、井上筑後守の言うところの「沼」であると私は思いました。
沼は暗くて、あまりにも深い。
それをカタチで表現した物の一つに、私たちの「墓」もあるのでしょう。

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