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コラム

2011-10-20

生き方としてのカウンセリング

私は、カウンセリングとは生き方そのものと思っています。
言い換えれば、カウンセリングとは相談室での相談者との面接の間だけに
起きるものではない。日々の生活そのものがカウンセリングである、という
ことです。別の言い方をすれば、カウンセリングとは人間に対する価値観・
哲学である、ということです。
ですから、私は、カウンセリングにおいては技法といった技術的なことは
二次的なことと考えています。

この私のカウンセリングに対する考え方は、米国の心理学者カール・ロジャース
の考え方に大きく影響を受けています。

カール・ロジャースは、カウンセリングにおける共感や受容の重要性を提起して
カウンセリング理論の発展に重要な影響を与えた人物ですが、彼自身カウンセリング
のことを、”A way of being“と表現していたと記憶しています。この言葉はまさしく
「生き方・生き様」と訳せるものだと思います。

ロジャースのカウンセリング理論自体彼の生涯の間に変化し、彼の生き方・生き様を
表しています。彼の理論は、「非支持的アプローチ」に始まり、「相談者(クライエント)
中心アプローチ」となり、最後には「人間中心アプローチ」となっています。
言い換えれば、ロジャースの関心は、最初はカウンセリング場面における支持的・非支持的
といった単に技術的なことにあったものが、後には相談者そのものとなり、引いては単に
相談者に留まらない人間そのものに移っています。

このようなロジャースの思想の変遷は彼の行動の変化にも表れています。彼は当初は相談室での
一対一のカウンセリング場面に重点を置いていましたが、1960年代後半からは相談室の外での
集団活動(エンカウンター・グループ)に重点を移し、その晩年(1980年代)にはもっと広い世界平和
に彼のカウンセリング理論を適用することに力を捧げていました。
私はロジャースの関心・行動の変化はある意味で当然の帰結であると考えています。

ロジャースのカウンセリング理論は日本のカウンセリング界にも絶大な影響を与えましたが
(日本でのカウンセリングは彼の理論から始まったといっても言いくらいです)、それには
ロジャースの理論を日本に紹介し、ロジャース研究についての日本での第一人者だった
友田不二男(元日本カウンセリング・センター理事長)の影響が大きかったと思います。
友田不二男は、後にカウンセリングを老荘思想や松尾芭蕉の俳諧との関連でとらえていま
すが、彼もまたカウンセリングを単に技法・技術的なことと捉えず広く捉えています。

その中で私が今も好きなのは、彼が芭蕉の一節を紹介して述べていることです。確か
「野ざらし紀行」からの引用だったと思いますが、芭蕉が旅をしているときに捨て子の赤ん坊に
出会った時のことです。芭蕉は持っていた握り飯をおいて、「汝が性の拙きを泣け」と言って
立ち去っています。

友田不二男は、この芭蕉の言動をカウンセリングの真髄を表すものとして紹介しています。
つまり、芭蕉は捨て子の赤ん坊を無視するわけではない。しかし、だからといって過度に
同情し関わるわけでもない。芭蕉は自分ができる限界をよく自覚した上で、捨て子の赤ん
坊に自らの運命を甘受せよといっている。

この態度は一見冷たいようですけれども、人が他人に対してできる事には限界があり、
究極的には当事者のみが問題解決に当たれる、というカウンセリングの基本的な理念を
表すものとして友田不二男は引用したものだと思います。

ただし付け加えますが、友田不二男はだからと言って社会の現状をそのまま放っておけば
いいとは考えていませんでした。彼は後に参議院選挙に立候補しました(たしか5万票余
りで見事に落選しましたが)。この彼の行動は、晩年に世界平和に力を注いだロジャースに
通じるものがあると思います。

以上、私はカウンセリングとは必然的にその人の生き方に関わざるを得ないもの、と考え
ています。皆さんはどうお考えでしょうか。

うつ心理相談センター
心理学博士 村田 晃

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